アイドリングを禁止する条例が普及し、駐車している間にエアコンをつけて休憩することが難しい時代になってきました。
しかし、近年の夏場の気温はハッキリ言って異常です。
室内であればまだしも、屋外で仕事をする方にとってエアコンなしでは熱中症になるリスクは高くなってきています。
特に運送業に勤めているドライバーさんなどは、アイドリングストップ条例のために、エアコンをつけずに休憩する方もいらっしゃいます。
窓を開けたとしても、効果はほとんどないのではと思います。
この記事ではアイドリングストップによる熱中症のリスクをお伝えすると共に、予防法やアイドリングストップに関する条例についても解説していきます。
少しでも熱中症になる可能性を低くするために今できることを実行していきましょう。
アイドリングストップによって熱中症のリスクは上がる!
アイドリングストップを実施するということは、エンジンを切るということです。
つまりエアコンの使用もできなくなります。
エアコンを使用しないことで、車内の温度はどんどん上がっていきます。
最近では昼間は38度や39度といった気温になるニュースが当たり前のように流れます。
当然、そのような環境の中で休憩していると熱中症になるリスクは高まっていきます。
エアコンをつけないと車内の温度は急激に上がるので危険
車内の温度はあっという間に上がるといわれています。
では、実際にどれくらいのスピードで温度は上がっていくのでしょうか。
JAF(日本自動車連盟)が真夏日に車内の温度を計測した実験を行っています。
参考URL:http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/usertest/temperature/detail2.htm
正午(12時)から15時までの温度上昇を計測しています。
車は5台あり、スタート時は全て25度の状態で、それぞれ以下の条件で温度を計測。
- なにも対策していない(黒のワンボックスカー)
- なにも対策していない(白のワンボックスカー)
- サンシェード装着(白のワンボックスカー)
- 3㎝窓を開けた状態(白のワンボックスカー)
- エアコンをつけた状態(白のワンボックスカー)
その結果がコチラ
画像引用:JAFホームページより
エアコンをつけた状態の車以外は全て平均温度が40度を超えています。
これは気温より高い数字になっており、車の中の方が熱がこもりやすいことを意味しています。
グラフを分析すると、
わずか30分でエアコンをつけている車以外は40度に到達。
15分で35度に達しています。
たった15分で10度以上温度が上昇するわけです。
長距離のトラックドライバーさんであれば、お昼休みのコンビニなどで30分ほど休憩することは珍しくありません。
エアコンをつけていないとあっという間に40度に達してしまいます。
そのような過酷な環境の中で休憩したといえるのでしょうか。
むしろ、車内にいることは熱中症になる可能性を高くしていると言えます。
こちらもJAFが出している熱中症指数の推移をまとめたグラフになります。
画像引用:JAFホームページ
エアコン停止からわずか5分後には注意、10分後には警戒レベルに到達しています。
ほんの10分足らずでもリスクは高まっており、30分以上エアコンを停止する事がいかに危険かおわかりいただけると思います。
ここまでのまとめ
- 30分で10度以上温度があがる(35度に到達)
- 1時間で15度以上温度があがる(40度に到達)
- わずか5分で熱中症注意レベル、10分で警戒レベルに到達
- 窓開けやサンシェードではほとんど効果なし
アイドリングストップで熱中症になる原因
熱中症とはそもそもどういった事が原因になるのでしょうか。
熱中症の原因:水分・塩分の補給が足りない
熱中症とは体温が上昇することで、体内の温度調整ができずにめまいやけいれん、頭痛などの症状がでることです。
その原因の一つが水分と塩分の不足です。
水分と塩分をこまめに補給しないと、それらのバランスが崩れ熱中症の症状がみられるようになります。
長時間、気温や湿度の高いところにいながら、水分や塩分の補給を怠ると熱中症のリスクが高くなります。
アイドリングストップによってエアコンを切った車内では急激に温度が上がるため、まさに上記のような環境になりやすいと言えます。
この急激に温度があがることが要注意なんです。
いままで涼しかった車内が急に温度上昇する。
ドライバーによってはそれまで涼しかったおかげでそれほど水分をとっていなかったというケースも考えられます。
また、ドライバーさんによっては、こまめに水分をとるとトイレが近くなってしまうこともあるため、どうしても水分補給の回数を少なくしてしまう傾向があります。
大きなトラックなどは休憩するのも一苦労ですからね。
「できれば止まらずに早く目的地に着きたい」
そういった心理的な状況もあって、
- アイドリングストップによる異常な温度での車内休憩
- 水分・塩分不足
この二つが熱中症になる原因を作り出しているといえます。
トラックドライバーなど運転主が実行できる5つの熱中症対策
でも、「いくら熱中症になるかもしれないと言われても、現実問題としてアイドリング状態でエアコンをつけて休憩することは難しい…」
そう感じているドライバーさんや事業主の方も多いと思います。
確かに熱中症になるからといって、エアコンをガンガンつけた状態で長い時間コンビニなどで休憩していると注意を受けたりするかもしれません。
しかし、何も対策をしないとそれこそ危険です。
そこで、アイドリングストップを実施しながらも熱中症の予防につながる5つの対策をココでお伝えします。
- こまめな水分補給(お茶やコーヒーは控える)
- タブレットや塩飴の使用
- しっかり睡眠をとる
- 冷却グッズの使用
- ポータブルクーラーの使用
こまめな水分補給(お茶やコーヒーは控える)
1番基本的なところですが、最も重要な対策が「こまめな水分補給」です。
ドライバーさんの中で熱中症になりやすいのは荷物の積み卸しの時です。
つまり、外に出て積み卸しをする前に十分な水分を補給しておくことがポイント。
もちろん、仕事が終わって一息ついた時にも忘れずに飲みましょう。
飲み物はスポーツドリンクがベストです。
水分だけでなく塩分も含まれているからです。
逆に、コーヒーやお茶は避けた方がよいです。
これらは利尿作用があるため、トイレが近くなります。
おしっこをすると身体から水分が失われ脱水症状にもなりやすくなるので注意が必要です。
タブレットや塩飴の使用
タブレットは塩分の補給に効果的な食べ物です。
夏のコンビニなどではよく見かけますよね。
塩飴などでもOKです。
塩分補給も水分と同じくらい重要です。
なぜなら、汗をかくことで水分と一緒にナトリウムが失われるからです。
ナトリウムが失われた場合、水などで水分だけを補給すると、血液中のナトリウム濃度が下がり、これ以上水分を補給しないように身体が反応します。
これを自発的脱水症状といいます。
無意識のうちに水分を摂取しようとしなくなるため、熱中症になるリスクが高まるワケです。
よって、暑い日に大量に汗をかいた場合は水分だけでなく塩分も同時に補給する必要があります。
スポーツドリンクなどにはナトリウムも含まれていますが、もし水などで水分補給した場合は、タブレットや塩飴なども必ず摂取するようにしましょう。
また、会社でタブレットや塩飴などを配布することも有効です。
しっかり睡眠をとる
体調がよくなれければ、翌日の仕事に差し支えるのは当然です。
そのためしっかり睡眠をとることを心がけましょう。
とくに夜にお酒を飲む方は注意が必要です。
お酒は飲み過ぎると脱水症状を引き起こします。
確かに夏の暑い日に仕事終わりのビールは最高ですが、飲み過ぎると逆効果。
睡眠も浅くなるので、疲れも取れにくくなります。
体力が十分でないと熱中症になるリスクも増えますので、たっぷり睡眠をとるようにしましょう。
冷却グッズの使用
最近では色んなところで、熱中症対策のグッズが売ってあるので利用すると効果的です。
おすすめは冷却タオル。
通常のタオルのように汗を拭くことはもちろん、頭や首を冷やすこともできます。
冷感繊維素材を使用しているため、冷たさが長く持続します。
さらに速乾性にも優れているため、汗を拭いてもすぐに乾く。
少し水に濡らせばヒンヤリとした感触が続くため、身につけておけば体感温度の上昇も防ぐことができます。
1枚もっておくだけで大活躍!暑い季節は手放せないアイテムです。
ポータブルクーラーの使用
アイドリングストップによってエンジンを切るとエアコンが使えない。
これが最大の問題点だと思います。
かといって、バッテリーでエアコンを動かすとあっという間に上がってしまうし。。
この様な時におすすめしたい対策が「ポータブルクーラー」の利用です。
充電式の電池を搭載しているので、車の力を借りずに冷風を作り出すことができます。
持ち運びできる小型タイプだから、使用する時だけ取り出せばサッと使えます。
これならアイドリングストップでエアコンがつかえない状態でも、車内の温度上昇を防ぐことができます。
5時間~8時間は稼働するため、休憩中に使用しても十分活躍できるのではないでしょうか。
個人的にもっておいて損はないアイテムだと思います。
アイドリングストップ条例と熱中症の関係性
アイドリングストップと言われるようになって各地で浸透してきましたが、具体的に条例にはどのようなことが定められているのでしょうか?
例えば、東京都の場合。
義務の対象者と内容
〈運転者〉自動車等を駐車、または停車する時は、エンジンを停止する(アイドリング・ストップ)義務があります。
原動機付き自転車も対象です。条例上、アイドリング・ストップ義務の対象から除外される場合
1.信号待ちなどの、道路交通法の規定により停止する場合
2.交通の混雑などにより停止する場合
3.人の乗降のために停止する場合
4.冷凍車、医療用車、清掃車などの動力としてエンジンを使用する場合
5.緊急自動車が用務のために使用している場合
など〈事業者〉
管理する自動車等の運転者に、アイドリング・ストップを遵守させるため、適切な措置を行う義務があります。
(研修、朝礼での確認、アイドリング・ストップロープの着用など)〈20台以上の駐車場の設置者及び管理者〉
駐車場の利用者に対して看板の掲示などにより、アイドリング・ストップを周知する義務があります。
掲示する内容には次の二つの事項を入れてください。
・条例で義務付けられていること
・アイドリング・ストップの実行
引用元:東京都環境局HPより
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/vehicle/sgw/300500a20180425133703131.html
基本的に、駐車はもちろん停車の場合でもエンジンを切る。
ただし、渋滞時や信号待ちなどでは適用されないなど例外も認められているようです。
また、事業者に対してもアイドリングストップを教育させるべきだと定められています。
コンビニなどでアイドリング禁止の看板が掲げられているのは条例によって決められているからなんですね。
条例をチェックすると、やはり、駐車場で休憩のためにエンジンをかけたままエアコンを使用することは条例違反となるようです。
どの地域でもほぼ同じような内容となっているため、どこにいってもアイドリングストップによって熱中症になる可能性は否定できないことになります(汗)
アイドリングストップ義務違反の場合の罰則
条例によって義務違反をした場合、指導に従わない者に対して勧告し、それでも違反した場合公表するという措置をとられるようです。
罰金などはありませんが、会社名や氏名が公表されるという面では社会的な評価という点でダメージは大きいかと思います。
条例といえどルールは守るべきですね(^_^;)
アイドリングストップを守りつつ熱中症の対策も行うことがドライバーの責任
ここまで、アイドリングストップと熱中症について様々な視点からお伝えしてきました。
- 熱中症にならないためにはエアコンをつけておくのが一番
- しかし、アイドリング禁止の条例にも対応しなければいけない
健康管理とルールに挟まれて、運転主の方は難しい対応を迫られている状況にあります。
「そりゃ、アイドリングは環境や燃費にも悪いからしないに越したことはないけど、だからといってエアコンを全く使わないと熱中症になっちゃうよ。」
そういうお気持ちも十分に分かります。
もし仮に熱中症になって、運転中にめまいやけいれんなどを起こしたら大きな事故につながる可能性があります。
しかしながら、そのような事故は決して起こしてはいけません。
それが車を運転する方の責任だからです。
熱中症にならないよう対策をすることは運転主や事業主が果たす義務だと思います。
なにより大切な命を守るための対策。
大変だとは思いますが、身の回りの方も含めてドライバーさんの健康管理と環境への配慮を続けていって欲しいと思います。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。